次の災害に備える -東日本大震災から10年 芸予地震から20年-

2021年3月11日放送

ポイント
① 東日本大震災をきっかけに動き出した住民 自分たちの命を守るためには「自分たちで行動を!」
② 油断を招かないように、大規模災害を忘れず伝え続け、次の災害に備えよう
③ 災害に強いまちって何だろう?子どもたちの意識が未来を変える?

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〝あの日から10年″私たちが次の災害に向けてすべきことは

松岡東日本大震災から10年経ちましたが決して忘れてはいけませんね。

白石そして愛媛にとっても、今年は芸予地震から20年、防災への意識を高めたい年です。

30年以内に起きる可能性が70%から80%とされる南海トラフ巨大地震。県の想定では、県内の死者は1万6000人に上るとみられています。
東日本大震災で失われた多くの命、津波の恐ろしさ、教訓をしっかりと心に刻んでいつ起こるとも限らない災害に備えなければなりません。

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愛南町福浦地区です。

■福浦自主防災会
防災士 松田恵子さん
防災士 菅原リエさん

菅原さん「あそこ、あの高さまで(津波が)くることになってる」
松田さん「あの上」
菅原さん「この高さです」
記者「間近に来るとかなり高い」
菅原さん「こわいですよね、ほんとに」

高知県境近く、海と山に挟まれた地形の福浦地区。
南海トラフ巨大地震では、12メートルの津波が来ると想定されています。

地元の防災士、松田恵子さんたちに地区内を案内してもらいました。

松田さん「ここがメイン通りです。大事な一本道です」
記者「細いなという感じ」
松田さん「もちろん建物も倒壊するでしょうし、塀とかも結構多いんで」

福浦地区から愛南町の中心部へ行くルートはこの道以外ありません。

菅原さん「孤立ですよね」
松田さん「孤立は間違いないですね」
菅原さん「救助が簡単に入れない」

しかも福浦地区の避難所は、全て、津波による浸水が想定されるエリアにあります。
そんな厳しい環境の中、松田さんと菅原さんは、住民自身の力で命を守ろうと訴え防災活動を続けています。

松田さん「みんなほとんど『わしら死んでもええけん。あんたらそんなことせんでええで そんな感じやったの」
菅原さん「だんだんと生きる気満々になって、訓練を重ねていくうちに」

5年前から、住民を誘って、細かい集落ごとに何度も避難訓練を行っています。

最初は、渋々参加という住民もいましたが、回を重ねる度に、訓練は熱を帯びていきました。
山の石や木の枝を使った炊き出し訓練に、抜き打ちの訓練、3か月に1回は防災の勉強会も開いています。

松田さん「ここまで全部山の状態だった。それを全部夫婦でここの方と3人がずっと全部チェーンソーで木を切っていって」

津波から避難するための高台へ続く道まで自分たちで作ってしまいました。
さらに…

松田さん「何人かは実際災害時に、ここにきて避難所として使わせてもらえたら使わせてもらいたいなっていう場所です」

高台に避難所がないため、災害の際、空き家を提供してもらえるよう持ち主と交渉しています。

松田さんと菅原さんが、地域の防災に力を入れるようになったきっかけは東日本大震災でした。
5年前、PTAの活動で被災地を訪れ、津波で家族を失った遺族から話を聞いたといいます。

菅原さん「声が思い出せないって言ってたりとかその日着ていた衣服ご遺体を探すのにその日どんな服を着ていたかとかまで見てなかったんよねって」
「家族とのやりとりっていうのが普段からしっかりとできていれば、あの時違ってたんじゃないかっていう後悔を聞きました」

2人は、被災地から戻った足で自治会に働きかけて防災活動を始めたのです。
そして去年、松田さんたちは新たな取り組みを始めました。

■訪問「こんにちは」

民生委員と防災士でチームを組んで高齢者の家を訪問していきます。

■愛南町民生児童委員協議会
濱本紀子さん

濱本さん「変わりはない?」
訪問先の男性「ない」
濱本さん「病院は?」
訪問先の女性「病院はいきよる」

松田さん「お昼間はだいたいそこ?リビングにおる?」

普段よくいる場所や寝室の位置などを聞いてメモしていきます。

松田さん「空き家の印もつけながら独居の方、あと高齢者の世帯、あと身体障害者を色分けしていろいろ作っている最中」

介助が必要な人がどこにいるのかどこが空き家になっているのかが分かるマップを作ろうというのです。

松田さん「万が一のときにここら辺におったよってことがわかれば自衛隊の方なり救助に来られた方に伝えることができるので少しでもそういう救助ができたらいいかなって」

松田さんもう繋がりが一番ですね。それに勝てるものは何にもありません。」
菅原さん「それには普段からの声掛けとか」
松田さん「ほんとにおせっかいですよね、今少ない。おせっかいが一番大事
菅原さん「ここの地域の人たちと一緒に生き抜いていきたいという気持ちはより強くなりました」
松田さん「今できるんであれば今できることはしたい」
菅原さん「あのときやっとったらというのは」
松田さん「そんなのは絶対に言いたくない。それを言わないようにするためには自分たちがどう動くべきなのか、どうすれば言わんで済むようになるのか」
菅原さん「やっぱりここの方たちと必ず生き延びる
松田さん「そこが着地点です。(私たちの)ゴールです」

 

過去の災害を忘れない 伝え続けることの大切さ

南海トラフ巨大地震では、愛媛県内全域で被害が出ると想定されています。

■県歴史文化博物館 大本敬久さん「特に松山、今治、西条、新居浜、四国中央での家屋の倒壊であるとか、あとは海岸部での浸水長期に渡る浸水被害っていうのが資料として記憶として記録としても残っていますのでそういったことにも目を向けていくべき」

愛媛の災害の歴史を研究し、伝承する活動を続けている県歴史文化博物館の専門学芸員、大本敬久さんです。

■大本さん「(大規模災害から)20年経ってしまうと人々の記憶から忘れ去られてしまう。そこから生まれてきた誤解としての言い方で〝愛媛は災害が少ない″と言われてしまっている忘却から誤解、誤解から生まれてくる油断っていうのが危険かなと強く感じる」

芸予地震からまさに20年の今年。

■大本さん「東日本大震災、そして愛媛の芸予地震も含めて過去の大規模災害っていうものをいかに忘却せずに次世代に継承していくかっていうことが大事になってくるそれがこれからこの3・11以降試されること」

 

未来をつくる子どもたち 自分たちで考える〝災害に強いまち″とは

2月、宇和島市の小学校で東日本大震災をテーマに防災の授業が行われました。
小学5年生は大震災当時0歳か1歳です。

■津波の映像見る子どもたち
辛い映像ですが津波の恐ろしさを目に焼き付けます。

■宇和島市危機管理課 防災推進アドバイザー 
山口賢司さん

「特徴としては地震が長いという共通点がある。みなさんは1分以上の地震を体験したら、例えば防災無線が鳴らなくてもこれは南海地震だと津波が1時間以内に来るからぜひ高台に逃げる。これは1人で遊んでいるときもそうですよ」

県の想定によると宇和島市の最大震度は7。
市役所などのある中心部は、津波でおよそ4メートル浸水します。

■山口さん「4メートルというのは木造家屋のほとんどが全壊するっていう高さです。それから2階まで浸水する。ということは、3階以上じゃないと助からない。避難場所にも使えない」
■児童「思ったより規模が大きくて怖かったです」
■児童「津波とか地震は本当に怖くて避けられないので、起こる前からちゃんと、備えておくことが大事だと思いました」

南海トラフ巨大地震で街で何が起きるのかを知った子供たち、その上で取り組んだのが…

■山口さん「災害が発生した際のことを想定し、災害の最小化につながるまちづくりを推進すること」

“事前復興”です。

自分の暮らす街を災害からどう守るのか…

■児童「ドームで守られているから津波がきても大丈夫なように」

■児童たち「なんか街があります。その下に根っこがあります。そこに何か装置つけとったら」
「地震が来たらぶおーんって(上がる)」
「津波が収まったら戻る」

自由な発想で、災害を小さくできる街を描いていきます。

子どもたちの考えた”災害に強いまち”。

■児童「これは地震探知機です。地面からの揺れを感知し管理室に情報が届きます。その情報は地震が来る約3日前に届きます。地震が来る前に地震が起こるか来ないかわかれば避難場所の確認ができますし、用意もできます」

■児童「地震が来て津波が来るとなった時、透明な堤防が津波よりも10メートル高く上がってきて、波が迫ってきているのを知らせます」
「堤防が透明な理由は、近くにいる人に、波がどのくらいの高さまで来ているかを知らせて、高いところに逃げてもらうためです。」

積極的に”防災”に関わった子どもたち…

■児童「授業を受けて(防災は)大切なんだなと気持ちが変わりました。」
■児童「地震や津波は、人々の大切なものを壊す、危険なものなんだということが分かりました」

■山口さん「大人では全く発想できないような柔軟な、しかも楽しい発表がいっぱいありました。今からの宇和島市を担っていってくれる子どもたちですから、しっかりといろんな災害に向き合えるように災害を見据えた考え方で生きていってほしい」

3日前に届く地震情報も、津波のときに立ち上がる透明堤防も、いずれ実現するかもしれません。
しかし、子どもたちの意識の変化は、何よりも力強い災害に強いまちづくりの第一歩となりました。

 


 

この情報は2021年3月11日現在のものです。