石手川ダムに潜入! -命を守るために知っておきたいこと-

2021年1月27日放送

ポイント
① 私たちの生活に身近なダム 命を守るために〝まずはダムについて知っておこう″
② 大雨の時、インターネットなどで発信される情報を積極的に取りに行き、早めの避難につなげよう
③ 下流では命を守るための工事や整備が進んでいる

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私たちの身近にある〝ダム″その内部は?

白石 きょう注目するのは、ダムです。

ダムには水道や農業用などの水を貯める
さらには防災、災害を防ぐため川に流れる水の量を調節するという大切な役割もあります。

ということできょうは松山市の石手川ダムの内部に潜入してきました。

青木さん、知ってましたか?
・石手川ダムができてまもなく半世紀が経ちますが、一度も使ったことのない設備がある
・下流では命を守るため、あるものが増えているんです
映像の中から探してみてください。

 

松山市内中心部を流れる石手川の上流にたたずむ石手川ダム

度重なる洪水から住民を守るため、農業用水や上水道の水を確保するために建設。

1973年の完成以来、48年間松山市民の生活を支えてきました。

巨大なコンクリートの構造物、中はどうなっているのでしょうか

 

■案内 石手川ダム管理支所 西山智支所長
白石「ダムの中にこんな通路があるんですね」
西山「はい、監査廊といいます」
白石「管ですとかコードとかが」
西山「ダムの操作とかに必要なケーブルだったりするんですけど、この先にもずーっと」

中には監査廊と呼ばれる通路が張り巡らされ、まるで迷路のよう…

さらに…

白石「ずっと向こうまで下りていっているように」
西山「361段あります」
「361!?ずっと階段が続いているんですか」

エレベーターもありますが、設備を点検するときには階段を使うのだそうです。

通路の途中には地震計やコンクリートの微妙な傾きを計測する装置など巨大な構造物を維持するための機器が設置されていました。

長い階段を下り通路を歩いていると、ようやく…

白石「ダムの真下!わぁすごい!大迫力ですね」
西山「高さは87m。くるりんってご存じですかね?あそこのてっぺんがだいたい85mなのでそれとほぼ同じくらいかな」

石手川ダムには3つの放流設備があります。

今、水が出ているのがホロージェットバルブと呼ばれる小規模な放流設備です

西山「上水道とかかんがい用水、畑にまく水とか農業用水そんなものに使われています」

さらに…

白石「ここですか?」
西山「そこです。その奥にちょっと見えませんけどメインの放流設備コンジットゲートがあります」

メインのゲートを近くで見られる場所へ行ってみると、赤い大きな筒がある部屋に…

白石「これですか?」
西山「こちらの下の方にゲートがあるんですけど、ちょっと見づらいですけど」

別の角度から見てみると…

白石「あ!おお、すごい!これはあの太い板の真上」

これが1秒間に最大で300トンの水を放流できるメインゲート。

さらに狭い通路を進んでいくと…

西山「ちょっと窓開けますので」
白石「うわぁすごい、すぐ下で放流していますね」
西山「(今1秒間に)0.2トン」
白石「0.2トンでこんなに出ているんですか」

ダムから5キロほど下流、松山市溝辺町の様子です。

これが2018年の西日本豪雨のときには石手川ダムでは過去最大の1秒間に、190トンを超える放流を行いました。

白石「何百トンですという言葉をきくとかなりの水が出ているということなんですね」
西山「数字から想像される大変さ、量と実際とは全然違いますので、ダムの放流のときには十分気を付けて河川の方には近づかないようにしていただきたい」

 

およそ半世紀、”1度も”使ったことのない設備とは-?

実は、石手川ダムにはダム完成以来、一度も使われたことのない設備があります。

 

西山「一番上のクレストゲート。あそこはダムが出来てほぼほぼ50年経ちますけど今まで一度も使ったことない」

ダムにある3つの放流設備の中で、唯一使ったことのないゲート。

その理由は―。

西山「クレストゲートは異常洪水時防災操作の時だけ使うゲートになる」
白石「緊急時のためのゲート」

2018年の西日本豪雨の際、野村ダムと鹿野川ダムで行われた異常洪水時防災操作、緊急放流。

大雨でダムが、水が貯められなくなったときダムの機能を守るためダムに入ってくる大量の水とほぼ同じ量を放流する操作です。

石手川ダムでは1度もこの操作を行われたことがありません。

仮に緊急放流を行った場合大量の水を流すため、下流の石手川が氾濫するおそれがあります。

西山「早め早めの連絡、体制を取って下流の方に警報を流します。下流の方はその警報を聞かれたら速やかに避難していただきたい」

ダムを管理する上で重要な部屋にも案内してもらいました。

西山「どうぞ」
白石「ここは何の部屋ですか?」
西山「こちらはダムの操作室ですね。こちらでダムのすべての設備を操作したり警報の放送をサイレンを鳴らしたりします」

操作室にはたくさんのモニターやパネルが並びます。

西山「コンジットゲートとクレストゲートの操作盤がこちら」

こちらはゲートを開けるための操作盤。パネルに出る数値を確認しながら操作します。

白石「鍵もついていますし、カバーまでされてますね」
西山「そうですね、カバーもありますし、ここも(コンコン)こういうカバーがもう一つついてますので」
白石「三重になってるんですね」
西山「非常に神経使いますので、失敗があってはいけませんから」

 

下流では〝命を守る整備″が進んでいた

ダムから下流の石手川に移動しました。こちらはダムの放流を伝える設備です

西山「赤いランプが2つ。赤色灯がついていますが、あそこが前は1個だけでした。西日本豪雨のあとにもうひとつ増設して最終的には4つになる予定です」

西日本豪雨を教訓に夜間でも見やすい赤色灯が光っている数で危険度を表すようにしたほかスピーカーも増設しました。

西山「通常の放流のときには1個、異常洪水時防災操作とか危険な状態になった場合には2つ光るようになります」
※現在の運用

さらに下流の重信川へ向かうと…

最近、川沿いに、このようなものが増えているの、ご存じですか?

■説明 松山河川国道事務所
    工務第一課 宮田晃課長
「これは洪水時にどういう水位になっているかっていうことを測ることに特化した水位計です」

こちら「危機管理型水位計」。

これまでの水位計と比べるとコストが低く多く設置できるため、愛媛県では西日本豪雨をきっかけに整備が進んでいます。

宮田「(これまで)川底から何メートルというような水位の表示の仕方をしていたので、それだとなかなか伝わりにくいというのがあったんですけど、危機管理型水位計の場合は堤防の高さから何メートル下に今水位がありますよと表示している」

川の水位情報というサイトで公開されていますので近所の河川に設置されているか一度確認してみましょう。

https://k.river.go.jp/

さらに堤防では…

白石「堤防って、こうなっているんですね」
宮田「これ今表面を剥いでいる状態になっているので、平成29年(2017年)9月のときの洪水が発生したときに堤防に水がしみ込んで堤防が壊れる寸前までいった」

 

■荻山記者リポート
「私のすぐ後ろにあるのが氾濫危険水位を超えた重信川なんですが、すぐ下まで水が迫ってきています。
 さらに川の中央部分を見ると物凄いスピードで濁流が流れているのが分かります」

2017年の台風18号では重信川の出合水位観測所で戦後最大の水位(5.65m)を観測し近隣の住民が避難する事態に。

重信川は氾濫はしなかったものの14区間で堤防から水が漏れるなどの被害が確認されました。

宮田「大きな石が入ってたり…」
白石「丸みを帯びた石とかもありますよね」
宮田「川の方の砂利を取って作っているので、非常に水がしみ込みやすいそのため堤防の中に水を通しにくいシートを入れて堤防を強化しているのです。」

さらに堤防の住宅側ではそれでも染み込んだ水を出しやすくする工事も同時に行われています。

宮田「川底の高さと住宅側の高さってそう大きく変わらないので、これが破堤するとこの水位が高い状態の水が、そのままばーっと流れていって、被害が大きいことになる」

ハード対策は進んでいますがそれでも災害は発生します。

宮田「雨が降ったときに今どういうふうな川の状況になっているのかっていうのに関心を持ってもらって、その情報を元に避難行動につなげてほしい」

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青木 命を守るためには堤防やダムが守ってくれると思わずホームページなどで積極的に情報を得ることが大切なんですね。

白石 そうですね。国土交通省の「川の防災情報」「川の水位情報」で河川の水位やダムの放流量カメラの映像を確認できますので利用してみてください。

 


 

この情報は2021年1月27日現在のものです。